説火さんから素敵なSSを頂きました(^^)♪
5期ネコちゃんの話です^^
ではどうぞ♪




「千の祈りを捧げましょう」


あの日から、毎日最低1羽、鶴を折る習慣が出来ていた。

『鬼太郎が怪我をしませんように』

祈りを込めながら鶴を折る。
毎日1羽ずつでも、チリも積もればなんとやらで、3年弱もあれば千羽折れてしまう。
短くはないが、妖怪である自分にとっては長くもない時間。
いざ戦闘になったら、自分は役たたずで何も出来ない。
そんな自分が嫌で変えたくて…頑張ってはいるけどまだまだで…。
気休めでしかないと分かっているが、それでも幾分か気が楽になる。
彼は皆を庇って危ない場所へ行ってしまう。
それを黙って見ているしか出来ないのなら、せめて無事を祈りたい。
毎日毎日、少しでも時間があれば鶴を折っていた為か、気付けば結構な数になっている。
数えてみればあと2百羽ほどで千羽になる。
チラリとカレンダーに視線をやれば今日はまだ13日。
(ちょっと頑張れば今月中に出来るかな?)
さっそく、折り紙に手を伸ばし、2羽目を折り始めた。


最近、ネコ娘は見掛けるたびに折り鶴を折っている…。
今だってそうだ。
遊びに来たはずなのに、1人で折り紙に夢中になっている。
傍らの手提げカバンの中には色とりどりの折り紙が入っている。
あまりにも一生懸命だから、どんな願い事をしたのか聞いたら父さんに「願い事は人に話すものじゃない」と嗜められた。
「それで、あとどれくらいじゃ?」
「う〜んと、あと70羽くらいかな?」
いつもならキチンとこちらを見て話すのに、今その視線はちゃぶ台の上…折りかけの鶴へと向かってる。
「ふーん…。あとちょっとじゃないか」
なんとなく面白くなくて、適当に返事をしても「そーなの!」と嬉しそうに答えられる。
…いつもなら真面目に聞いてよ!と怒るのに。
だいたい鶴を折るだけならワザワザここでやる必要はないじゃないか。
ゴロリと横になっても何も言わない。
いつものネコ娘とは、やっぱり大分違う。
面白くなくて、目を閉じればいつしか本当に寝入っていた。

目を覚ました時、辺りは暗く、ネコ娘の姿はもうなかった。
「起きたのか、鬼太郎。
ネコ娘はもう帰ったぞ」
「そうですか。…今ご飯を作りますね、父さん」
「うむ」
立ち上がりかけて、ちゃぶ台の上に折り紙と折り鶴が散らばっているのを見つける。…ネコ娘のものだ。
「父さん、コレは?」
「あぁ、ネコ娘が忘れていったんじゃよ。バイトに遅れると、慌ててでていったからな」
ひとまず散らばった折り紙を一ヶ所に纏め、ご飯を食べる事にした。

ご飯も食べ終わり、父さんも寝てしまった。
僕の前には折り鶴。
…鶴を1羽折るのに何分かかるのか?
ネコ娘はとても丁寧に折っていたから時間もかかるだろうし、何よりコレに掛かりきりになれるわけもない。
鶴の折り方くらい僕でも知っている。
手伝ってやろうかとも思ったが、ネコ娘がどんな願いを掛けているのかも分からない。
折り紙を1枚手に取り、意味もなくひっくり返してみたりする。
…そうだ、こうすればいい!
ネコ娘ほど上手く折れないが、キチンと願いを込めて鶴を折る。
やってみると案外楽しくて、なるほどネコ娘が夢中になるわけだと納得した。


「ごめ〜ん、鬼太郎。
昨日あたし折り紙置いてっちゃった…」
昼頃、慌ただしくゲゲゲハウスを訪ねてきたネコ娘を、鬼太郎は大きなあくびを1つして迎え入れる。
「やぁ、いらっしゃいネコ娘」
「…どうしたの?
ずいぶん眠そうだけど」
ネコ娘は促されるまま座るが、心配そうに問い掛けてくる。
「うん、昨日はコレを作ってたからね」
「コレ…」
ちゃぶ台の上には、昨日自分が折ったよりも明らかに量の多い折り鶴がある。
「ネコ娘にあげるよ。もうすぐ千羽なんだろ?」
「えっ?でも…」
“千羽鶴”というものはただ千羽折ればいいというものでもない。
千羽鶴には千回分の祈りが捧げられている。
気持ちは嬉しいが、コレは受け取れない。
「大丈夫だよ」
ネコ娘が何を考えているのか分かっているとばかりに鬼太郎が請け合う。
「ちゃ〜んと“ネコ娘の願い事が叶いますように”って願掛けしながら折ったから」
「きたろう〜」
嬉しくて涙がでそうになる。
鬼太郎のこんな優しいところがやっぱり大好きだ。
「ありがとう鬼太郎、遠慮なくもらうね」
「ああ、どういたしまして」
鬼太郎は昨日ずいぶん頑張ってくれたようで、アレから自分で折った分も入れれば千羽になりそうだ。
「じゃあね、鬼太郎」
「えっ?」
早く完成させたくて、折り鶴を受け取ると、ネコ娘はすぐにゲゲゲハウスをでていってしまった。
「今、来たばかりなのに…」
幸か不幸か、鬼太郎の呟きを聞いたものはいなかった。


鶴は鬼太郎に貰った分も入れたら千羽より少し多くなった。
余った分は大切にしまっておく事にして、千羽の折り鶴を百羽ずつ糸に通し、そのあとひとくくりに纏める。
出来上がった千羽鶴は神様に奉納するのだという。
ならその時は鬼太郎にも一緒に来てもらおうか?
想像をするだけで楽しくなってくる。

「で〜きた!」

最後の1羽に糸を通し、出来上がった千羽鶴を満足げに眺める。
さっそく鬼太郎に見せようと、ネコ娘はゲゲゲハウスに向かって行った。


余談ではあるが、妖怪横丁では暫らくの間“千羽鶴”がブームになったらしい。

   END


いかがでしたか!
鬼太郎を気遣うネコ娘とそんなネコ娘を思いやる鬼太郎、
心がとっても温まってきますね(人^-^)vv
う〜ん、良い!!
説火さん素敵なSSを本当にありがとうございました!!!



update:2010.9/14

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