説火さんブログ開設記念作品を頂いてきました!!(≧▽≦)/

「イタズラ」


いつもの様にネコ娘は妖怪横丁の奥にあるゲゲゲハウスへと向かっていた。
今日はパン屋でバイトをしていた。
甘い香りに包まれた店の中に一日中いたせいか、体には甘いパンの香りがついてしまっている。
…まぁ、嫌な匂いではないから鬼太郎と目玉の親父に(余ったからともらった)パンを届けてすぐに帰ればいい。
売り物にはならなくとも…まだまだ充分美味しいソレを、ぜひ鬼太郎たちにも食べさせたいと思い、ネコ娘は駆ける速度を少し速めた。

「き〜た〜ろ!」
簾をあげて家の中へと入れば…目当ての人物はもう寝ていた。
スースーと寝息をたて、規則正しく肩を上下させている。
「…もう寝てる」
今時の小学生ならまだ起きている時間だというのに。
辺りを見回すが目玉の親父の姿は見えない。また子泣きのところか夜行のところへでも行っているのだろう。
起こすほどの用事ではないから、パンと書置きを残して帰ればいい。
…でも。
「せっかく来たのに…」
朝は用事があってこられなかったので、今日は初めて鬼太郎に会ったというのに…これではつまらない。
しばらくジッと見ていたが、起きる様子はない。
「…まっ、仕方ないか」
ネコ娘はパンを袋ごと卓袱台の上に乗せると、メモ帳を取り出しパンを置いていくから食べてね。と書き、そのメモ帳をやはり卓袱台の上に乗せた。

…書置きは残したし、鬼太郎を起こす気はないのだから、後は帰るだけだ。
…だけだが。

「ふふ、カワイー」

こんなにジックリと鬼太郎を見れる機会などなかなかない。
さすがに目玉の親父がいては恥ずかしくてこんなにジックリと見る事などできない。
貴重なチャンスを活かすべく、ネコ娘はスースーと寝息をたてる鬼太郎を見る。…こうしてジックリ見ていれば、そのサラサラな栗色の髪に触れたくなった。
その衝動に抗わず、そっと手を伸ばして前髪に触れれば、くすぐったいのかすぐに振り払われた。
ペチンと軽い音が立つが…起きる気配はない。
ムクムクとイタズラ心がわいてくる。
どこまでやったら起きるだろうか?
ツンツンと前髪を引っ張ってみる。
熱をはかるかの様に額に手をやっても起きない。
次はほっぺたに触れようとした時だった。

鬼太郎が寝がえりを打ったのだ。

「にゃ!?」

その寝がえりに、ネコ娘の伸ばした手が巻き込まれる。
ネコ娘がいる方とは逆側に寝がえりを打たれ、バランスを崩してしまい、ネコ娘はそのまま倒れてしまった。

――鬼太郎の上に。

――ちゅっ。
「うわっ!」

その衝撃でさすがに起きた鬼太郎は自分の上にネコ娘が乗っている事に驚いていた。
「ネッ…ネコ娘!?」
「ごっ、ごめん!鬼太郎!!」
ネコ娘は唇を押さえ、顔を真っ赤にさせて謝った。
「ネコ娘…大丈夫かい?」
どうしてこんな状態になったのか解らないが、様子のおかしいネコ娘の方が心配だ。
「にゃっ!?…う、うん、あたしは大丈夫!!」
ブンブンと挙動不審なオーバーリアクションで手と頭を同時に振っている。
「本当に?」
その手を押さえてジッと見つめてくる鬼太郎にネコ娘はますます顔を赤くさせた。
「ほ、ホントホント…」
コクコクと頷くネコ娘は慌てた様子で早口にしゃべりだした。
「あっ、あの鬼太郎、バイト先からパンをもらってきたの。明日にでも食べて」
そこまで言うと、未だに鬼太郎に掴まれている手に視線をやった。
「あっ、ごめん」
その視線に気づいた鬼太郎はパッと手を放した。とっさに掴んでしまったので力の加減が出来なかったかもしれない。
もう一度大丈夫かと問う前に、ネコ娘は立ちあがった。
「えっと…明日も早いからあたしもう帰るね」
バイバイと顔を真っ赤にさせたままでネコ娘はゲゲゲハウスから出て行った。
「…変なの」
クスリと笑うと、鬼太郎は自身の左頬へと手をあてた。

――チッ。

小さな音が、ゲゲゲハウスに響いた。


一方、ゲゲゲハウスを逃げ出した――そう、ネコ娘は逃げ出したのだ。
あのままあそこにいる事はとても出来なかったから。
ネコ娘は自分の家へとは向かわず、横町とゲゲゲハウスの間にある湖へと向かう。
そこで少し頭を冷やそうと思ったのだ。
(にゃ〜〜〜〜…)
月明かりで除く湖には、夜目でも分るほど赤い顔をした自分が映っている。
そっと、手を唇に触れさせる。
なんとなく、まだ感覚が残っている気がする。

あの時。

鬼太郎の上に倒れ込んだとき。
あたったのだ。
自分の唇が………。


――鬼太郎の頬に…。


(にゃあぁぁぁぁ…)

あんな一瞬だったのに、唇には鬼太郎の少し冷たい肌の感触が残っている。
幸い鬼太郎は気付いていないようだった。
もし気付かれているとしたら…。

(ぃにゃああぁぁぁ〜!!そんなの恥ずかしすぎる〜〜っっ!!)

想像だけで恥ずかしい。
しばらくはまともに鬼太郎と顔を合わせられそうもない。

――はぁぁ〜〜。

ネコ娘はおおきなため息をつく。
どうせ顔を合わせづらくなるのなら…。

「にゃあぁぁぁぁっっ!!!」

浮かんだ妄想にネコ娘は声をあげてそれを振り払う。
いつもの妄想ではあるが、今日はつい先ほどの事が頭に浮かび、恥ずかしさがつのる。

なんだかどっと疲れたネコ娘だが…今日はまだ帰れそうもない。



おまけ

「なんだよ、鬼太ちゃん…今日は不機嫌じゃねぇか」
「別に…」
いつものように鬼太郎にたかりに来たねずみ男は、昨日ネコ娘が持ってきたパンを勝手に食べていた。
その様子をジッと見ていた鬼太郎はフイッと視線をそらすとごろりと横になってしまう。
(不機嫌…てーより、拗ねてるって感じだ〜ね)
鬼太郎が不機嫌だろうが、拗ねていようが、ただ飯にありつけるのなら知った事ではない。…ようは、お腹がふくれればそれでいいのだ。
「あともうちょっとだったのになぁ〜…」
「…んっ?なんか言ったか?鬼太郎?」
鬼太郎の呟きを聞きとがめたねずみ男は訊ねるが、べつに。という返事以外は返ってこなかった。
気になったのは一瞬で、ねずみ男はまたすぐにパンへと意識を戻した。

後はいつもどおりの日常が繰り返されるだけだった。

End

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いかがでしたか?(人^-^)
こちらは説火さんがブログを開設された記念に配布されていたSSです。
何と言うイタズラ!何と言うハプニング!!何と言う惚けっぷり!!!
鬼太郎、羨ましいヤツめ!!!(´д`;;)
説火さん、素敵なSSをありがとうございました!!
ブログ運営、頑張って下さいね!!


update:2011.5/28

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